ホームAVION ツアー日記サビサビ(ブルートレイン&南アフリカ)レポート

サビサビ(ブルートレイン&南アフリカ)レポート

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再び南アフリカへ

ベスト・シーズンの9月、今度は18人で再び晩春の南アフリカの地に向かった。



サビサビに向かう飛行機

アフリカといえば人類の発生の地として、又は先史時代にナイル川流域に栄えたエジプト文明の地として知っているが、現代の私達に密接に関連のある歴史的な事実はアパルト・ヘイト以外記憶が薄い。しかしながら、ポルトガルの王子ヘンリー(航海王子と呼ばれた)の命を受けたバーソロミュー・ディアスが、南アフリカの西海岸一帯を探検し(後に喜望峰と呼ばれるようになった)大西洋につながるもう一つの海(インド洋)と分けている嵐の岬を1788年に発見した。それから10年後、バスコ・ダ・ガマが喜望峰を廻ってインド航路を発見して始まった大航海時代が、ヨーロッパの貨幣経済の発展を促し、資本主義を根付かせ産業革命がその結果起り、近代国家が成立し、世界に大変革をもたらした由緒ある地でもある。

クルーガー国立公園の中の私営動物保護区

今度の旅は南アフリカ最大のクルーガー国立公園内の一部にあるサビサビ私営動物保護区から始まった。

クルーガー国立公園は北のモザンビークから南のマレーランまで350km、東西幅60kmに及ぶ広大なローランド或いはローベルトと呼ばれる低平原低木森林地帯である。その大きさは四国に匹敵するもので、有史以前はブッシュマンやホッテントット達が動物達と弱肉強食しあいながら広く生活していた地域でもある。生息する動物の種類と数は世界最多だという。その名前の由来は、1886年当時、この地方はトランスバール共和国であった。その大統領ポール・クルーガーが狩猟によって乱獲される動物達を守るため動物保護区にしようとの提案をして出来あがり、クルーガーの名が付けられて今日に至っているからなのである。

私達が訪れたサビサビは、このローランド地帯を南南東から西北西に向けて流れるサビ川の畔にあり、動物達がこの川沿いに多く生息しているといわれている私営動物保護区である。オーナーは「ヒルトンルーン」という大金持ちでヨハネスブルグに住んでいるが、その素性は聞いてもよく分からない。

サビ川の物語

私達は12人乗りの飛行機(フェデラル・エアー)に乗ってヨハネスブルグから約1時間半、上空から近づくと黄土色の土地にまばらに茂る緑の木々の間にインパラや象の群を見た。これからここで過ごす数日間にビッグファイブ(ライオン、ヒョウ、象、犀、バッファロー)と呼ばれる動物達をどれだけ見ることが出来るか期待で胸が大きく膨らんだ。

空港は小さな茅葺きの小屋である。降り立つと、とにかく暑い、げんなりするほどの暑さである。日陰に身を寄せ小屋に入ると涼しく一息入る。出迎えはレンジャー姿の20代の若者が6人乗りのサファリカーを運転して来ている。

ロッジは「アースロッジ」といって、2000年、南アフリカ最優秀ゲーム・ロッジに選ばれたところである。ロッジへのデコボコ道を、木々の間を縫い、乾ききった小川を渡って走りながらレンジャーが、サビ・サビという名の由来を話してくれる。天蓋はなく嫌がうえにも太陽がじりじりと照りつける。30度はもうゆうに超えているだろう。サビサビの語源は、最初のサビがサビ川で、あとのサビは悲しみを表すというのだ。その昔、サビ川の畔には動物達が多く集まり、水くみにやってくるブッシュマン達を襲い、多くの人が動物達の犠牲になった。その人達の悲しみを表しているというのだ。

憧れのアースロッジ

20分ほど走ってロッジに着いた。渡された冷たいおしぼりとウェルカム・ドリンクが身にしみる。ロッジは広大なサバンナと低木林に包まれ、土地の起伏を利用して岩窟住居のように土饅頭の頭を一寸出している。棟が10数棟飛び飛びに並んでいるが、全く自然の中にとけ込んでいる。


アースロッジ

自分達の棟に向かう道々には象の大きな糞の固まりが落ちている。夜になると動物達がお腹を空かせてうろうろ出歩いて来るので、バトラー(執事の意だが世話係だろう)の運転するゴルフカートのような乗り物で食堂やラウンジに出かけなければならないのが規則になっている。
部屋はスイートタイプで、広々としたツインの寝室は空調が良く利いている。外に大きく開けた窓に向かったソファー、バスルームにはやや変形した細長いお椀のような大きなバスタブとシャワールームが別にある。テラスには小さなプールがあり、常時ポンプで水の浄化をしている。入ってみると冷たく、外が暑いので心地良い。背を一杯に伸ばし一かきするともう反対側に手が届く。プール脇にある寝椅子に横たわると、広がる緑の低木の林、所々に倒れて枯れている木が見える。 聞くと象が現れて、茂る葉を食べながら押し倒したり折ったりしたのだという。時を忘れ静寂な自然の中に身を任せていると、生命の悠久を感じる。


動物たちのウェルカムショー?


ロッジから見える動物たち

一息入れて、本館のラウンジに行くと、100m位離れた池の前に象が3頭、キリンが2頭姿を見せている。暑いので水浴びに来たのであろうか。しばらくするとその中の1頭の象がラウンジに近づいてきた。前にある木の葉を食べながら、やがて力強い鼻を枝に巻きつけ折りにかかる。居合わせた人達は夢中になって写真を撮っている。私は部屋にカメラを置いてきてしまった、残念だ。象とキリンが去ると今度はインパラとバブーン(ヒヒ)がやってきた。まるで動物達のウエルカムショーだ。茶を飲みながら暫く静かな大地の空気に浸っていると、レンジャーが「ワニが池の畔にいるよ」と声を掛けてきた。目を凝らして見たが、なかなか分からない。地面の色が保護色となっているのだろうか。やっと見つけた。細長い木の幹が横たわっている。それがワニだったのである。

サファリゲーム-三台に分乗して-

夕方4時からサファリゲームに出かけることになっている。6人ずつ天蓋のない四駆に乗る。3台の車は思い思いの方向に走り去る。何故ゲームというのかと聞いたら、魚釣りと同じだと答えが返ってきた。
「釣りの穴場といわれる所に行っても、釣れる人もあり、釣れない人もある。動物を見つけられるか、見つけられないかは全くゲームと同じ運だよ」と付け加えて言った。それぞれの方向に向かうのは、レンジャーが感じている穴場に向かっているのである。



サファリゲーム

車は木々を縫ってゆっくり走って行く。ランドローバーのボンネット前方に取り付けられている小さな椅子に座っていた見張り役のレンジャーが、突然ドライバーに合図をおくった。スピードを更に緩めろということだ。いたいた、いきなり「ホワイト・レイノ」だ。3頭いる。5〜6m位前には小さい沼がある。その向こうに1頭を挟んで2頭が代わる代わる寄り添っている。車が止まった。よく見ると小さな犀が大きな犀の邪魔をしている。レンジャーが「真ん中はメス、両端は雄、メスを誘っている雄を子供が邪魔をしているのだ」「白犀なのに黒いのは、極端に皮膚が乾くのを嫌って前の泥沼に寝転がって泥をなすりつけたからだよ」と話してくれる。更に「レイノはグレイザーといって草食動物だから、鼻から口にかけてのあたりを良く見てご覧。ほら口もとが平らになっているでしょう。地面に生えている草を、口を滑らせながら、食べ易くなっているんだよ」「ブラック・レイノは同じ草食でも木立の葉を食べるから口先が尖っているんだ」「レイノは食べる速度が速く、1分間に78回もぱくぱくと口を動かすんだよ」と教えてくれる。


また走って行くと、お尻に白い輪のある「ウオーターバック」や頑丈そうな大型の「クドゥ」という鹿の仲間と出会う。サバンナを縞馬が駆けている。ブッシュの中に「ウワーソグ」と呼ばれるイボイノシシが子連れで10匹位現れる。可愛らしい。象が草を食べている。一日250kgの草を18時間も食べ続けるという。1回のゲームで色々な動物達と出会った。言うなれば大漁だ。
夕方のサファリゲームは4時からだ。6時頃になると日が沈んでゆく。サバンナの夕日は実に大きく美しい。無数のバブーンがねぐらを探して移動している。バブーンのねぐらとなるのは「フィッグ・ツリー」だとレンジャーが教えてくれた。日本のイチジクより枝振りも木の高さも違う、そのこんもり茂った葉の中に、ぴょんぴょんと飛び移って行く姿はまるで影法師のようだった。このようなゲーム・サファリを滞在中、朝晩4回やった。

念願のヒョウやライオンとの遭遇


ヒョウ

そして翌朝とうとうヒョウと出会った。無線が鳴った。近くにいるサファリカーからの情報だ!「近所にヒョウがいるぞ。北東の方向だ早く来い」。車は猛烈な勢いでバックしダッシュする。ジャンプする。ローリングする。3分位疾走しただろうか、ブッシュに入り込んだ。ブッシュの中に一寸開けたところがある。そこの木立の下に、もう2台ばかりの車が止まっている。着いて見上げると、ヒョウが木の枝にインパラを引上げ貪っている。レンジャーが「あれはオスで、今獲りたてのインパラを食べているところだ。最初ははらわたから食べるんだ。彼らは80kg位の大きな餌でも引き上げる力があるんだぞ」と話す。やがてヒョウは満腹になったのか、下の枝にブランコに乗るように手足をだらりと下げて、満足そうに口を開け閉めしながら眼をしばたかせた。木の下にはメスのヒョウが、落ちている食べかすにありついていた。ほとんど木の上にいるヒョウの真下まで接近する。「お腹が一杯だから安全だよ。でも動かないように」とレンジャーは言った。
すっかり日が暮れた。見張りのレンジャーはサーチライトでブッシュの中やサバンナを照らす。私達には見えない小動物や動物のうなり声を聞きつけて車を止める。ブッシュの中に、ヒョウが歩いていたのだ。レンジャーはヒョウの先回りをして車を走らせる。また、さっきのヒョウに出くわした。獣道をレンジャーは知っているのであろうか。空を見上げると、西南の方向に南十字星が輝いている。満天の星がまばたいている。



ライオン

また次の日は、とうとうライオンにぶつかった。朝6時、しっとりとした自然の中に車を走らせる。寒い。昼はあんなに暑いのに、車のなかに備えられている毛布をかぶらないとたまらない。
やがて、レンジャーと見張り役が緊張した面もちで車から降り、道に残された動物の足跡を観察している。「これはヒョウだ、いやライオンだ。南に向いて歩いている」などと囁き合っているのが、とぎれとぎれに聞こえてくる。意見が一致したのか車をバックさせて南に向かってサバンナに出る。一台のゲーム・カーが止まっている。緊張が走る。小声で無線を使い連絡し合う。「ライオンだ!」近づくと3歳位のライオンがたてがみを靡かせながらこちらに向かって歩いてくる。5m位に近づいた。うなり声が聞こえる。レンジャーが「お腹を空かせている。皆動かないように」と小声で言う。車にはライフル銃が用意されているので、「今までに使ったことがあるか」とたずねると「ノー」と小声で返してきた。夢中でシャッターを切る。遂にビッグファイブ全部を見た。目標を達成した満足感が全身を走る。

ゲームの成果は?

帰ってそれぞれの成果を自慢げに話し合った。そしたら一台だけがライオンに出くわさなかったのだ。でも縞馬の群れやキリンの群れに出会ったと言う。なるほどこれがゲームなんだなと妙に納得しあった。
悠久の自然の中で遊ぶサファリゲームの味は忘れられない思い出になった。

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