ホームAVION ツアー日記カナダ・イエローナイフにオーロラを求めて

カナダ・イエローナイフにオーロラを求めて

カナダ・イエローナイフにオーロラを求めて

旅人:高城 英雄

イエローナイフへオーロラ探索出発

 成田を19時10分に出発して18時間40分、現地時間の21時47分にイエローナイフの空港に降り立った。飛行中の空はあんなに晴れていたのに、イエローナイフは薄曇りで、時折白い月が、流れている雲の合間から顔を出していた。
長旅だったが、案外皆元気だ。税関を出ると出迎えの大塚社長が大きな袋を持って待っていた。袋の中味は毛糸の帽子とネックウオーマー、親指が分かれた大きな手袋とフード付きダウンのパーカ(アノラック)、ズボンと防寒靴が入っていた。これらは予め知らせてあった参加者の身長や靴の文数に合わせてある。
いそいそと身支度をして、車に乗り込んだ。外は一面の雪、パウダースノーだ。気温は零下10℃だというが、着替えたせいかとても温かい。

厳寒向き服装

厳寒向き服装

   空港で履き替えるブーツ

空港で履き替えるブーツ



郊外のキャビンに向かう

 オーロラとの出会いは不定である。今の天候だと見られそうだ!と言われると、探索に出掛けなければならない。日本から着いたばかりの私たちの車は町から25kmほど離れたデタ村に急いだ。運転手兼オーロラーガイドの大塚さんが、時折空を眺めながら慎重に運転していた。突然車を止め、カメラを持って外に出た。「皆さん降りて下さい。オーロラの子供が見えますよ」大塚さんが私たちを呼んだ。私たちもカメラを持って車から飛び出した。大塚さんは空を指さして「あの白い雲のように見えるのがオーロラです」「えっ、あれが?只の雲のようだけれど!紫や青では無いの?」「そうです、間違いありません。多くは最初白なのです」皆の頭には綺麗な色をしたカーテン状のオーロラがあって、なかなかその説明には頷けない。
「キャンプに急ぎましょう。チャンスは五分五分ですけれども」再び車に乗って急いだ。

キャンプへの道の冬景色

キャンプへの道の冬景色

  寒そうなお月様

寒そうなお月様



3泊すれば見える確率95%

 大塚さんは私たちに希望の光をあたえるように、「イエローナイフは北欧諸国よりオーロラ帯がカナダに傾いているうえ、天候が比較的安定しているので、3連泊すれば、見える確率は95%です。ほとんど大丈夫と言って良いでしょう。残りの5%は皆さんがどれだけ強く見たいと思っているかにかかります」と話してくれた。「私たちは3連泊するから、絶対大丈夫よね。だって絶対見たいのだもの」と女性の一人から絶対に力を込めた声を上げた。その上、これから向かう先が「デタ村」というのだから縁起が良い。



キャンプと称する建物

 戸建の山小屋風のキャビンは、10畳二間ほどの木造りの建物で、中には赤々と薪ストーブが燃えていた。入口近くにソファーが置かれ、織物が敷いてあった。中央部には、長机の上にご当地インディアンの手芸品が並べてあり、椅子が6~7脚ほど置かれてあった。希望すれば、刺繍や縫物を指導してくれるのだという。
キッチンらしい場所の壁際には、この小屋の持ち主であるボビーさんが焼いてくれたパンの入った籠が置かれ、スープやコーヒー、紅茶類のティーバッグが箱ごと無造作に置かれてあった。熱湯の入ったポットは、大塚さんの奥さんが作ったお菓子とともに持ち込んでいた。
電気は自家発電だそうで、照明は充分にある。
「今晩は、夕食は無いの?」誰かが云った。「そうですよ、今は夜中の12時、小腹が空いた人の夜食として並べられてあるパンやお菓子、足りない方はスープ麺などを召しあがって下さい」そう言えば、今日一日は何となく眠り、機内食2回で過ごしてきたから、お腹が空くのは無理もないのかも知れない。

キャンプの内部

キャンプの内部

  キャンプ刺繍手芸品

キャンプ刺繍手芸品

キャンプ夜食

キャンプ夜食

 


オーロラは見えたの?

 待ちきれない人たちが、時折戸外に出て空を見上げては帰ってくる。月が時々顔を出す以外変化は無い。カメラを三脚にセットして月を撮る。「白く見える雲かオーロラか見分けがつかないものを写して見ると、オーロラであれば怪しい光を探し出すことが出来ます。この12月は青が基調で赤はほとんど見る事が出来ません」と大塚さんは説明する。
キャンプに戻って暫くすると、外にいた女性が「オーロラが出た」と歓声を上げてキャビンに飛び込んできた。皆おっとり刀で外に飛びだしたが、オーロラはもう既に消えていた。「白い雲の様な筋に青い光が見えたの、確かにあれはオーロラよ!」オーロラを見たのは8人中2人だけ。本当にラッキーだ、あの2人は。
このような状態が3晩も続いて、2人を除いた皆は諦めモードになってしまっていた。



確率95%の神話は崩れた

 犬橇の事務所で出会った他の旅行者たちに、オーロラを見たか聞いてみると、「今日で5日目だけれど全く見ていない」。「私たちは2泊の旅、今日帰るけれど、見られなかったわ」という返事が返って来た。今年の12月は暖冬で、気温が-10℃位のせいかも知れない。暖冬だと雲が発生しやすく、例え高空にオーロラ現象が発生しても見る事が出来ない。イエローナイフに来れば絶対に見る事が出来る、という神話は完全に崩れた。
私たちはデタ村の3夜の中で、柱を三角に組んで帆布を張ったテントに誘導され、オーロラに出会えない私たちを慰めるかのように、カリブーの肉を焚き火で焼いて食べさせてくれた、優しいボビーの思い出と、犬橇の体験を抱いて帰路に就かなければならなかった。
もう一度今度は3月に来ようと胸に誓いながら。

キャンプの外の景色

キャンプの外の景色

 


ベックケンネルズ

 3日目の午後、犬橇体験ツアーに全員で出掛けた。町を離れると直ぐ大きな看板が見えた。「ベックケンネルズ」右に折れると入り口だ。犬小屋がたくさん並んでいる。犬たちの鳴声があちらこちらから上がっている。「ここのミスターグラント・ベックさんは犬橇の世界大会で何度も優勝した方で、オフイスに入るとたくさんのトロフィーが飾ってあります。犬橇を自分で操ってみたい人と、5~6人乗りの橇に乗ってベックス湖を一周されたい方の2班に分かれます」大塚さんの説明の後、車から降りてオフイスに入った。
なるほど、たくさんのトロフィーがあちらこちらに置かれてある。部屋は普通の家の応接室のようで温かい。話によれば、ここは宿泊施設の一部なのだそうだ。道理で、優しい雰囲気が漂っていた。



犬橇は爽快で面白い

 暫くして外に出た。ここでは訓練士が一番上、次はお犬様、三番目がお犬様の世話係だそうだ。その世話係の人が橇を曳く犬たちを物色中だった。世話係が檻に近付くと犬たちは一斉に吠える。自分が曳く!自分が曳く!曳きたい!とでも言っているのだろうか。
4頭が繋がれた橇で出発だ。1人は座席に、1人が椅子の後に掴まって、足を橇の上に置きブレーキ操作を教わって、ブレーキを離すと一斉に犬たちは走り出した。なんでも、観光用の橇の先導犬は若い犬で、本番のレースに向けての訓練を兼ねているのだそうだ。ちょっと急な坂道は上るのが大変で、4頭では橇が止まってしまう。御者台に乗った者は片足で雪を蹴り、犬たちを助けなければならない。ブッシュを抜けて、やがてベックス湖に出た。湖は今、広い雪原になっている。先導犬は私たちに「大丈夫?」とでも云うように時々振り返りながら一生懸命走っている。すこし前を走っていた橇がひっくり返った。ところどころ雪原に湖面の水が浮いて出来たシャーベット状のところがある。そこを避け切れずに突っ込んで、バランスを崩したのだろう。私は身体を右に倒し、橇を右手に誘導してことなきを得た。途中で交代しながらベックス湖を一周した。犬たちのスピードが落ちかけた時、「ほう、ほう、ほーれい」と声を掛けると犬たちは又一生懸命に走りだす。

橇に繋がれた犬たち

橇に繋がれた犬たち

  犬橇スタート

犬橇スタート

二人乗り犬橇走行中

二人乗り犬橇走行中

 


仕掛け網漁法

 橇の付いたスノーモービルでベックス湖面を走って行くと、もう一つの湖グレイス湖に出た。湖の中央部近くに竿が離れて立てられている。2本目の竿のところで私たちは橇から下りた。二人の魚師は湖面に開けられた70cmくらいの穴に手鍵(フック)を入れて何やら2本の綱を曳き出した。それを持って10mくらい後方に引っ張って雪の上に置いた。雪氷の厚さは未だ30cm位だと云う。私たちは最初の竿まで歩いた。二人は同じように最初の竿近くに開けられてある穴にフックを入れて綱を引き上げ、綱引きのように曳き始めた。暫くすると網が出て来てところどころに魚が引っ掛かっている。40cmくらいの丸々太った魚たちだ。ホワイトフィッシュ、恐ろしい顔をしたコッド(鱈の一種)にイワナと3種類くらいだ。みるみる20数匹になっていた。そこで網を元に戻し、無造作に拾い集めた魚たちを、ダンボール箱に投げ込んで一巻の終わりである。氷を割ってのイワナ釣りには氷の厚さが未だ充分ではないそうだ。

スノーモービルと橇

スノーモービルと橇

  氷湖に仕掛けた魚網

氷湖に仕掛けた魚網

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魚網にかかったホワイトフィッシュ/p>

  獲れた魚を両手に

獲れた魚を両手に



雷鳥との出会い

 イエローナイフの観光に出掛けた。この町は地下資源が豊富でダイヤモンド鉱脈や金鉱が発見されて、ダイヤモンドラッシュ、ゴールドラッシュによって出来た町だそうだ。最初にできた、ごく普通のしもた屋風の銀行が残っていた。そこを過ぎるとちょっとした藪があって、その枝に白いハトより大きな鳥が数羽止まっていた。大塚さんが車を止めて「雷鳥です。カナダの雷鳥はハリモミライチョウと呼ばれています。日本の雷鳥との違いは日本アルプスのような高山地帯では無く、このように人が住んでいるところでも多く見ることが出来るのです。飛ぶ事も出来るのですよ」皆はこんなに近くにいる雷鳥におどろきながら、夢中でシャッターを切っていた。「イエローナイフの雷鳥は、まるで人間を仲間か何かと間違えているのではないかと思うくらい、人が近付いても逃げないのです。雪が降って白い色となった雷鳥は見分けがなかなかつかなくて、車に轢かれる事もあるんですよ」。車を走らせている途中でも、数羽の雷鳥が道端でたむろしていた。

町にいる雷鳥

町にいる雷鳥

  最初に出来た銀行

最初に出来た銀行

イエローナイフで一番高い丘

イエローナイフで一番高い丘

 

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