ホームAVION ツアー日記世界最大の望遠鏡すばるを訪ねて6391キロ

世界最大の望遠鏡すばるを訪ねて6391キロ

世界最大の望遠鏡すばるを訪ねて6391キロ

旅人:高城 英雄

ハワイ・ビッグアイランド

 9月25日の午後12時32分快晴のコナ国際空港に降り立った。出迎えていた女性ドライバーが「皆さんはラッキーですね、先週末は悪天候がハワイ島全体を襲って大変だったのよ。でも翌朝はマウナ・ケア山頂が初冠雪に覆われていて綺麗だったわ。ぜひ見せてあげたかったわ。例年雪の神様"ポリアフ"が素敵な景色をプレゼントしてくれるのは11月くらいなのよ」と話してくれた。
う~ん、マウナ・ケアの雪景色か、見てみたい。



キング カメハメハ リゾート&スパ

 私たちはホテルキングカメハメハに直行した。未だ13時だというのに直ぐに部屋が貰えた。1975年からある古いホテルだが、2002年に改修されて全てが新しくなっているのが売りとなっている。その上、ロケーションがとても良い。街が目の前から海岸沿いに広がり、リゾート地の雰囲気が一杯である。
昔は街に出ても、みやげ物屋や釣り舟屋さんの屋台がぱらぱらあっただけだと記憶しているが、随分開けたものだ。

 エレベータに向かう回廊の左右にビニールシートが張られていて、終わった筈の工事がまだ続いていた。不思議に思って開店しているお店の人に聞いてみると、3・11の東日本大震災の大津波がこのホテルにも3日後に襲ってきて、一階部分の全ては流されたり、濡損して未だに復旧工事が終わっていないのだと答えが帰ってきた。日本だけが大変だったのではないと改めて津波の恐ろしさを感じた。

 もう一つ気が付いたことがある。ビッグアイランドの人たちはアロハやムームーをあまり纏っていないことだ。太陽とともに華やいだアロハやムームーがハワイらしい雰囲気を醸し出していたような記憶があるのだが。屋内が冷房で寒いからか、フロントの女性はカーデガンを纏っていた。

ホテルキングカメハメハ

ホテルキングカメハメハ

  ホテル近くの遊歩道

ホテル近くの遊歩道



あこがれの"すばる"を目指して

 マウナ・ケア4205m山頂にある我が日本の天体観測所を見学する日だ。
地球はどのようにして生まれてきたのであろうか、ロマンチックな星たちの本当の姿は一体何だろう。
ハワイ島に到着してから3日目、充分に休息し体調は万全だ。嘗て、ペルーのクスコを訪れた時、3200mの町でひどい高山病に罹ったことがあったので、本音を云えばとても心配だった。

 午前11時30分の予約に間に合うように四輪駆動車で出発した。高度調整の為に2800m地点にある鬼塚センターが第一目標である。車はホテルを出て19号線から190号線に折れて、ひた走りに走った。平均時速は45マイルやがてパーカー牧場を右折して200号線に入った。ここは2車線でヒロまで通じている通勤道路だそうだ。結構車の往来が激しい。起伏の激しい路に入った。サドルロードと呼ばれる区間だ。速度は25マイル、アップダウンを繰り返しながらいつの間にか高度は1700mになっていた。出発して1時間、左折して山頂に通じるアクセスロードに入った。車はスルスルと緩いカーブを上って18分鬼塚センターが見えてきた。ここで30~40分の高度調節をする予定になっている。

鬼塚センター

鬼塚センター

 


すばる望遠鏡

 出発前、今度ハワイの国立天文観測所にある世界一の望遠鏡"すばる"を見学に行くのだと友人たちに伝えると異口同音に「望遠鏡で覗けるの? 良いなあ、ロマンチックで」と返事が返ってきた。これは世界最大の口径を持つ光学赤外線望遠鏡で、すべて集光したものをコンピュータに取り込んで解像するのだから、覗き見口から天体を見る事は出来ないようになっている。
だいたい、すばるのある棟と観測室のある棟は離れているのだから、ちょっとの説明では、幾ら光をコンピュータに送って解像すると言っても天文おたくでない限り分かりにくい。
しかも、この光学赤外線望遠鏡と日本の長野県にある長野原電波望遠鏡やチリのALMA電波望遠鏡の基地と連動してそれぞれが相互にどこからでも観測できるというのだから驚きだ。

すばる・他

すばる・他

  すばる主棟模型

すばる主棟模型

11観測所と雲海

11観測所と雲海

 


鬼塚ビジターセンター

 名前は定かではないが、確かスチュワートさんだったか。ビジターセンターの様々な雑用をこなしながら、天体望遠鏡を広場に設置して太陽の黒点やフレームを説明しながら見せてくれている。初めて見た太陽の黒点は赤い中に小さなそばかすのように点在しているのが分かった。しかし、フレームはなかなか見えない。スチュワートさんが脇から「8時から9時の方角をよくみてごらん」と教えてくれる。やっと見えた黄赤色の円の外側に一瞬紅炎が揺らぐように姿を現した。「やっと見えました」チュワートさんは良かったねというように微笑んだ。

太陽の黒点

太陽の黒点

  太陽プロミネンス

太陽プロミネンス



エピローグ

 数日前、ノーベル物理学賞の発表があった。カリフォルニア大バークレイ校のパールマッター教授が他2名と共同して「宇宙の膨張が加速している」事を発見したというのだ。すばるの説明者からも聞いたが、確か、この教授たちはすばるも利用して観測を続け、膨張を加速している真空物質「暗黒エネルギー」の存在があるのではないかという確信を持って、指摘したと説明されていた。未だ研究中だということだが、世界中の天文学者たちは、雨や湿気の少ない、人口の明かりや電波に左右されない世界の高地に、電波や光学赤外線の天体観測基地を共同で設け、宇宙に人工衛星を飛ばして電波や光波では観測できない謎の物質をX線で観測するなど、三位一体で未知の宇宙に挑んでいる。
地球の誕生と終焉、そして未来の新しい地球と同じ星の発見がもう間近かも知れない。疲れ果てた地球の末路は大爆発で炎上するのか? それとも氷の棺で覆われるのだろうか? もう明らかになっているのかも知れない。

ドーナツ状星雲

ドーナツ状星雲

  青色の帯がある銀河

青色の帯がある銀河



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