ホームAVION ツアー日記スバル夢と憧れの天体観測レポート

スバル夢と憧れの天体観測レポート

スバル夢と憧れの天体観測レポート

旅人:秦公利様

世界最大の天体望遠鏡スバル見学と夜空の星を両手一杯に掬えたハワイ島旅行

 少年時代夜空一面に見えた沢山の星に魅せられて、いつの間にか反射天体望遠鏡を手造りするようになっていた。恒星や惑星、流星群や星雲は日本でも場所によって見ることはできるが、今回は日本が誇る世界一の天体望遠鏡のすばる見学が出来るというので欣喜雀躍してツアーに参加した。4200mの山頂から見る夕日や星の観測も引き続いてできるというのだから尚、期待に胸が膨らんだ。

 日程を見ると、すばる天文台見学と星空観測は新月にぶつかっている。心憎いばかりの配慮が伺えた。機上から見たマウナケア山頂は雲海の中に頭を出していた、マウナケア山頂の晴天率は99%だと出発前の説明会で聞いていたが、にわかに天候のことが気になり始めた。午前10時、しかし晴天のなか航空機はコナ国際飛行場に着陸した。どうやら心配した天候は大丈夫そうである。到着日と翌日は4200mに車で登頂する為の安息日となっている。もちろん大好きなお酒もダイビングもお預けだ。

 ワイコロア地区にあるマリオットホテルにチェックインすると、海辺を抱くようにして建てられているホテルの部屋からは抜群の景色が望めた。リゾートに来たという実感で身も心も軽くなってきた。ヤシの木、赤や黄色のジンジャーの花、プルメリア、アンスリウムなどが南国を醸し出していた。夜になった。星空に手が届くようで嬉しくなった。矢も楯もいられずホテル前のビーチに繰り出し、白鳥座や琴座、鷲座の位置を確かめた。「よし、明日の晩は星の勉強会を開いて、あさってに備えて貰おう!」いつの間にか少年の心に戻っていた。

 朝食は海に面したオープンエアーのテラスでとった。リラックスして心地良い潮風にあたりながらの朝食は格別で、王様気分になっていた。
「希望者は今晩、夕食後ビーチのリクライニングチエアーに集まって下さい。新月近い夜空の星は綺麗ですよ、一緒に観測しましょう」と同行の仲間たちに呼びかけた。夜、5人ほどが集まっていた。星たちは心なしか、昨晩より大きく見えた。空気が澄んでいるし、辺りには星明かりを遮る邪魔な光はほとんど無かった。昨晩確認した白鳥座や琴座、鷲座や天の川(銀河)を挟んでベガ(織姫)やアルタイル(牽牛)も見えていた。カシオペアのMの真ん中の線を延長して行くと2等星の北極星を見つけて北の方角を知ることが出来た。また西の低い位置に珍しい赤く輝く金星と東の空に明るい木星などを見ることができた。

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新月近い夜空の満天の星



すばる天文台へ登坂

 今日も快晴だ。お弁当を買いこみながら、四輪駆動でマウナケアの山頂目指して走った。第一の目標地点2800mまでは1時間15分。上り下りのちょっとしたジェットコースターのような坂道を順調に駆け上がって行く。ふわっと身体が浮くような状態に、子供のように大騒ぎしながら、綺麗に舗装された道をぐんぐん走った。時々耳がツーンとするが、たいしたことはない。

 2800m地点に近付くと鬼塚センターの建物が見えてきた。ここでお弁当を思い思いの場所で食べながら高度に身体を順応させるのだ。空気は少しひんやりするが半袖でも気持ちが良いくらいで、雲海が真下に見える良い眺めだ。

 13時いよいよ最終行程、すばる天文台・4200mへの登坂が始まった。30分くらいだというが、結構急斜面を登って行く。途中平坦な道は舗装されているが、上り下りの道は未舗装でがたがたと走っていた。ガイドに聞いてみた。理由は簡単で、山道のスピード走行をさせない為だそうだ。事故は自己責任の国だとは言え、無茶な事故が起きないよう考えられているのには感心した。

 悪路を登りきると舗装された道が待っていた。各国の天文台施設の間を走りながら、13時30分すばるの説明をして下さる方が、入口で手を振って私たちを迎えていた場所に安着した。そこで係の方から、山頂は地上に比べると60%しか空気が無いから、呼吸はゆっくりと深く、動作もゆっくりとして下さいと注意を受けた。

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スバルの施設(左端) 右側は他国の観測施設

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すばる宇宙観測望遠鏡観測の入っている施設



世界一の天体望遠鏡

 4200mは意外と体調に変化を与えていなかった。ほとんどの方が顔色も変えずに入口から屋内に入った。屋内は結構寒い、聞けば4℃だと云う。天蓋が開けられた時の外気温に設定してあるのだそうだ。想像以上に大きな望遠鏡が作動確認で動いていて、こちらに迫って来るような感覚に陥った。

「レンズの大きさは直径8.2m、世界一の天体望遠鏡です。光を集光しやすくする為に、レンズの表面にアルミを蒸着しています。銅の方が反射率は高いのですが、錆びるのでここでは、アルミを使用しています」私は思わず「蒸着というと、それはここの施設内で行っているのですか?」と聞いてしまった。「そうです、蒸着釜はこの測候所内に設置してあります」と説明が返って来た。蒸着はアルミを釜で蒸発させて素材の表面に付着処理する方法だ。この大きな望遠鏡の管理運営の為に周到で緻密な計画が当初から為されて運営されている。素晴らしい観測所だと感激した。他の皆さんは年間予算を聞いて「この様な仕事の成果から考えても、もっと予算が増やされなくてはおかしいですね」と仰っていた。

 10m以上の高さがある外周階段を上って、すばるの周りを一周した。網目状の床なので足元を見ると恐怖に襲われてしまいそうだった。見学が終わってハワイ島に来た第一の目的が達成された喜びがふつふつとわいてきた。子供のころ書物を見ながら手造りで完成させた反射望遠鏡を思い浮かべながら、長足の進歩を遂げ続けている天体観測技術に、又昔のような天体あこがれ少年に戻り、満足感と幸福感で一杯になっていた。

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すばる宇宙観測世界最大の望遠鏡です



オレンジ色の帯を放つ黄道光

 鬼塚センターで夕食を済ませて、再登坂。4200mの地点でサンセットを見る為だ。富士山より圧倒的に高い地点での観測は初めてだ。期待に違わず、太陽が西に傾くと、空の色は刻々と変化し、東にかかっている雲に山影を映し出した。これから始まる壮大なドラマの序曲のように思えた。空が黒味を増すころ、赤味の残る空に赤みがかった金星が現れて来ました。その直後、太陽が沈んだ場所から上空にオレンジ色の帯状の光が現れました。紛れもない素晴らしい"黄道光"だ。大気圏外の塵が演出する一大ドラマだ。この光が美しく見えるハワイ島の空気は、如何に綺麗なことか! やがて空は漆黒の闇に変わった。

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4200m山頂の夕日1

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4200m山頂の夕日2



両手一杯に掬える星、星・・

 星の観測は鬼塚センター周辺で行われる。天体望遠鏡が置かれている場所に来ると、さっきまで四輪駆動の運転手だったミスター・ゴートンは星座案内人に早変わりしていた。ペンライトのレーザー光線を夜空に向けて星を結びながら星座の形を作り「ほら、頭を右にした"サソリ座"が見えるでしょう。これは南の方角です」などと話してくれている。商売とはいえ、なかなか知識豊富で驚きでした。

 昨夜地上から見た銀河は何だったんだろう? 2800m地点で見る銀河はまさに"河"と云う表現があてはまる。沢山の星が帯状に星雲を型作り流れているように見える。
 感動しながら何時まで見ていても見飽きない。また今度来よう! 今度はすこし違った月日に。アビオンクラブさん、また良い企画を作ってください。

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ハワイ島満天の星



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