ホームAVION ツアー日記オカバンゴ大湿地(ボツワナ共和国)レポート

オカバンゴ大湿地(ボツワナ共和国)レポート

オカバンゴ大湿地(ボツワナ共和国)レポート

夢みていたオカバンゴへ

NHKの地球プラネットの番組でボツワナにあるオカバンゴを強く印象付けられた私は、どうしても自分の目で訪れてみたかった。
11月の末、遂に機会を得て南アフリカのヨハネスブルグ(現地ではジョハネスブルグと読んでもいる)から44人乗りのHAVILLAND--DASH8-300で首都ハボロ−ネに向かった。40分余りの飛行時間で到着した首都の玄関は、こぢんまりとしていてまるでロ−カル空港のようであった。しかし空港舎屋前の広場は整備され緑の芝生や色とりどりの花が咲いていた。土の色、緑の芝生、黄色や赤紫の花々が蒼い空とマッチしてとても美しかった。


アカシアの花

タイのゴールデンシャワーのような黄色い花を一杯に付けた木とその合間にひっそりとジャカランダがシーズンの終わりを告げる赤紫の花と種子を付けていたのが印象的だった。
 「あの黄色い花はなんて云うのだろう?」「いやあ、花の名前は苦手なんですよ」同業の仲間でも当てにならない。通りすがりの土地の人に聞いてみる「アカシア」と確かにそう聞こえた。「本当?アカシアっていう花は白じゃあなかったっけ」帰って調べてみるとアカシアは、もともとアフリカやオーストラリアなどの熱帯〜亜熱帯地方のもので、種類はとても多いと分かった。日本や中国のアカシアは「にせアカシア」と分類されている。


マウン空港からチャーター機

ここで更に40人乗りくらいの小振りな飛行機に乗り換えて、オカバンゴやカラハリ砂漠へ向かう拠点、マウンに向かった。マウンはハボローネの北北西932kmに位置していて、観光の拠点になってから急速に発展している。1時間ほどで到着し、更に此処で14人乗りのセスナに乗り換えた。
 「荷物は12kgの範囲に押さえ、ソフトバッグに入れてください」ハボロ−ネを出る時うるさく云われたが、なるほど荷物の収納口が小さい小型機では致し方ない。オカバンゴデルタで生活している人たちやロッジの必需品も、同じ飛行機で同時に運んでいるのだ。


乾期の地表

本当にフィルムで見た通りのデルタなのだろうか。窓から見える大地は湿地帯どころか、乾いた大地にところどころ赤茶けた緑が島のように点在しているだけだ。なあんだとやや失望しているところに、小さな沼や干上がった河岸をみせている澱んだ川が目に入ってきた。雨期に入ると一帯が水浸しになるに違いないと目を閉じ、NHKの映像とだぶらせながらその光景を頭に浮かべてみた。
私たちは35分ほどで滑走路に降り立った。飛行場ではなく滑走路だから当然建物類は何も無い。そうだ、ここはただ赤茶けた緑の葉を付けたアカシアの林がところどこにあるサバンナなのだ。強烈な太陽光線を遮ってくれているのは、これらの木の葉っぱしかない。


日本から20時間?

外気38°Cから逃れるように木陰にサファリー4駆が停まっていた。ここまで一気に飛んだとしたら約20時間足らずで着いたことになるが、実際は香港で乗継ぎに2時間、ヨハネスブルグで1時間半の待ち時間を費やし、ハボローネで1泊しているのだ。更にマウンで1時間半の乗継ぎ時間は必ず必要でもある。最もヴィクトリアフォールズに近いカサネ空港からマウンに向かう方法もある。


オカバンゴ湿地帯

ここに雨期ともなると大量の水がアンゴラからオカバンゴ川に流れ込み、溢れ出てこのカラハリ砂漠を覆ってゆく。と云うとオカバンゴはカラハリ砂漠の一部なのかな? それともカラハリ砂漠がオカバンゴの一部なのだろうか。湿地帯の広さは東京都の約7倍にあたる16000km2もあると説明を受けてもどのくらいの広さか分からない。日本の国土の1/25、関東平野の1/2と云われてみるとなんとなく分かってくるような気がする。 そのようにして溢れ出た水は扇状に広がり、湿地や芦の河床、小川、氾濫原を形造るのだそうだ。空から眺めた地図状に見えた地上の縞は、乾期に干上がった水跡だと分かった。乾期の湿地帯面積は9000km2に縮まってしまうと聞いた。なるほど雨期空けに訪れさえすれば、地球プラネットの映像と同じ光景を見ることが出来るのだと一人合点したが、それが何月ならば一番良いのかが気に懸かった。 たくさんの動物たちはこの土地の1/3ほどに住んでいて、食や水を求めてそれぞれの縄張りの中を動き回っているのだが、カラハリ砂漠とも同じ生息圏になっているそうだ。


サバンナを走る

サバンナを走る四輪駆動車は軽快に走ることは出来ない。なにしろオフロードは走れないので、毎日のように走る車輪で掘り返された草地から砂地が露出しているので、左右にローリングし、上下にジャンプする走行になってしまう。時速はたった20〜30kmでも揺れは覚悟しなければならない。


オカバンゴの動物たち

それでも左右に現れる動物たちに夢中にさせられて、揺れを忘れてしまう。サファリカーには私たちの他、ドライバーが1人しか乗っていないから、私たちが目を皿のようにして、動物たちを探すのである。ドライバーは低い位置で運転しているので、私たちが「ほら!右に犬みたいなのが一杯いるぞ」ややあって、ドライバーが指さす方向で探し当て「あれは、珍しいよ!アフリカン ハンティング ドッグって云うのさ。ここ2ケ月くらい、走っていても見ていなかったよ」と云う具合である。数を数えてみると、19頭はいた。 本当に、オカバンゴのサバンナやブッシュに現れる動物たちは、ほとんど大きな群れをなしていた。主な動物たちは、スプリングボック、インパラが圧倒的に多い。次ぎに象だ。キリンに縞馬、ヌー、ワイルド ハンティング ドッグ、ワーソグ(イボ・イノシシ)、カバなどが3番目である。他にクドゥ、ゲムスボック、ウオーターバック、プク、など鹿の類が多い。チータ、ハイエナ、だって見ることができたが犀やライオンには全く出会えなかった。1回や2回のゲーム・ドライブでは駄目なのかも知れない。


南アクルーガー動物保護区との比較

クルーガーの私有動物保護区サビサビでは、レンジャーが二人乗っている。1人はボンネットの先にしつらえられてある椅子に銃を持って座り、動物たちを探索するのだ。ある時は、大型動物の新しい足跡を見つけて車を止めさせ、ドライバーの同僚と動物の種類、歩いて行った方角などを検討しあって車を進めて行くのだ。そこで乗っている人たちとレンジャーの一体感が生まれていたのだが、此処では、そのスタイルでなくとも動物が団体で生息しているから、走りさえすれば良いということなのだろうか? でも、もう一台は、私たちが見たチータを見ていなかったのだから、やはりレンジャーが足跡や糞を追っかけて動物を見つけるスリルを味わわせてくれる方が、動物やレンジャー、お客さんと一体感が生まれて面白くなるかも知れない。


夜空に浮かぶ南十字星

地平線に浮かぶ小さな森の中に、太陽が最後の光を残して沈んでいった。やがて空は一瞬茜色に染まると森は薄明かりに照らされて影法師となり、次第に暗闇が訪れる。上空を見上げると星が瞬き始めていた。 夜が更けて行くと、星がだんだんに大きくなり頭上に重たく輝いてくる。12月の南十字星は頭上近くの西側に輝いていた。 シャレー(バンガロー)に戻っても、開け放たれた窓(網戸になっていてガラスや壁は無い)から星が見えている。ベッドに横たわって星を眺めている内に何時しか夢の世界に引き込まれてしまう毎夜だった。


モコロと首飾り

モコロという木をくり抜いた丸木舟に乗った。船頭さんを入れて3人しか乗れない上に身動きがよく出来ない。ううかりすると、ひっくり返ってしまいそうで恐る恐る乗っているかんじであった。芦の茂みをかき分けながら、睡蓮の白やピンクの花が浮かんでいる静かな沼を滑るように走って行くと、座禅を組んでいるような気分になってくる。時折その静寂を破るようにカバが「グワー」と声を挙げ、夢想の境地からふと我に返させられる。日が西に傾き水面が茜色に染まり始めると、睡蓮の葉が同調した色に変わってくる。なんとも云えない静けさの中に、船頭さんの姿が溶け込んで一服の絵となってしまった。船頭さんは、睡蓮の花を茎から手折ってやがて上手に首飾りを作り上げ、同乗者の女性の首に掛けた。彼女は心の籠もったペンダントをぶら下げ、ダイヤモンドより素晴らしいと、誇らしげに胸を張り、夕陽を浴びながら感極まっていた。


夢は膨らむ

私たちはここでたった2泊しかしなかったが、6週間の予定でボツワナを廻っている3人の家族らしい年輩者たちがドイツからやって来ていた。 食事をとりながら話を聞くと、一番若いご婦人が「アフリカは動物との出会いも良いけれど、この自然と静寂さが良いのよ。エツァやトゥリに行ったことがありますか? 素晴らしいですよ! 景観がまたここと違っていますことよ。ここのシャレーにも3泊して自然に浸りながら、どんな動物たちとの出会えるかを楽しみにしているわ」と答えてくれた。日本からは遠くて高価な旅費だけれど、ヨーロッパからの旅人のように十分時間を取って来てみたいものである。もう一人の自分を捜しに。


このページのトップへ ▲