南極の氷床や北極の氷床は大きく後退している。2万年前から始まった融解期は4千年前くらいに終わって落ちつき、現状の地球が形成されたそうだが、ここ50年急速に地球温暖化が進み、天候異変が起こっている。今年のグリーンランド上空のように暖かい高気圧が居座って(熱のドーム現象)、僅か1週間の間に融解率47%から97%まで50%も上昇してしまったというから、こんな150年周期で一度起きるか起きないかの、地球現象が生んだ景色に遭遇し、体験できたのは良かったのか悪かったのか、とてつもなくセンセーショナルな気分に陥った。しかし・・・
地図上で、そのほとんどが白く塗られたグリーンランド。
さぞかし厳格な自然と、圧倒的な奇景・絶景が横たわっているものと、『覚悟』していたけれど、全く別の意味で裏切ってくれた。"良い意味で" でもなく、"悪い意味で" でもない。まったく別の思いもよらぬ形で期待を上回った。
そこにはれっきとした人間社会があり、人々も、動物たちさえも人懐っこい。町で地図を見ていれば子供たちが近づいてきて案内してくれ、ちょっと挨拶を交わした相手であれば、車ですれ違うときにでさえ笑顔でブンブンと手を振ってくれる。(犬たちも「遊んでくれるの?」と言いたげな表情で寄ってくる)
なんだか日本ではなく、こちらの方が『母国』ではないのかという錯覚に陥りそうになってしまう。
それでも、この土地に五日間いて、彼らがにこやかでいる気持ちが理解できてきた。
夜中の23時を回っても沈まぬ太陽と、これに照らされて、黄金色や桃色に輝く氷山・空を見上げていると、暖かな気持ちになってくる。圧倒的でありつつ、畏怖ではなく暖かみを感じさせる景色というのも珍しい。
まだ日本ではあまり馴染みのない土地ではあるが、ぜひ多くの人に体感してみてほしいと思った。